デモ口座とは?リアル口座との違いを解説
デモ口座では、ブローカーが配信する価格を使い、仮想の資金で取引します。リアル口座では、実際の資金を、実際の流動性の中で取引します。チャートはどちらもまったく同じに見えます。だからこそ、両者の差は過小評価されがちです。変わるのは目に見える価格ではなく、実際の約定、請求されるコスト、そして判断を誤ったときの代償です。
仕組み
デモサーバーは注文を受け付けると、提示中の価格でそのまま約定させます。取引相手はおらず、ブローカーの帳簿に載るポジションもなく、リスクにさらされる資金もありません。そのため、リアル口座の約定を左右するいくつかの制約が、デモにはそもそも存在しません。
- 板の厚みも、順番待ちもない。デモでは注文サイズにかかわらず、提示価格で全量が約定します。リアルでは、注文は市場にある厚みを順に消化していき、残りは不利な価格で約定するか、一部しか約定しません。
- リクオートも約定拒否もない。デモサーバーが注文を断ることはほとんどありません。リアルのサーバーは断ります。しかも断られるのは、たいていそのトレードがいちばん大事な数秒間です。
- 理想化されたスプレッド。デモの価格配信では、その瞬間のスプレッドではなく、平均的なスプレッドが使われることがよくあります。そのため、指標発表の前後や毎日のロールオーバー時に起きる拡大が小さく抑えられているか、まったく見られません。
- コストは計算上のもので、実際には請求されない。デモのスワップは古いスケジュールのままだったり、そもそも発生しなかったりします。リアルのスワップは銘柄ごとに設定され、変動し、ロールオーバー日には3日分が計上されます。
- 何度でもリセットできる。資金を飛ばしたデモ口座はワンクリックで補充され、カーブには何の痕跡も残りません。リアル口座で資金を飛ばせば、その事実がそのままカーブになります。
リアルの成績 = デモの成績
- エントリーと決済のスリッページ
- 約定拒否やリクオートで逃したエントリー
- 実際のスプレッド拡大と実際のスワップ
- 自分のお金だからと見送ったトレード
最後の行は冗談ではありません。自分のお金がかかると、ポジションサイジングも、ドローダウンの最中にポジションを持ち続けることも、計画どおりに動くことも、まったく別物になります。
なぜ重要か
上に挙げた違いは、すべて同じ方向に働きます。デモは成績にランダムなノイズを加えるのではなく、摩擦を取り除きます。しかも取り除かれるのは、摩擦のコストが最も大きいところ、つまりエントリー、損切り、ロールオーバーです。そのため、デモの運用実績は成績の見積もりではなく、上限として読むべきものです。
この影響は、取引の頻度が高いほど大きく、狙う値幅が大きいほど小さくなります。バックテストを左右するのと同じ計算です。ShowMyTradesでは、トレードの保有時間の中央値は2.4時間です。これだけ短いと、執行コストは端数として片づけられる大きさではなく、成績の中で無視できない割合を占めます。
だからといって、デモが役に立たないわけではありません。EA(エキスパートアドバイザー)が動くか、マジックナンバーが設定されているか、ロット計算が正しいかを確かめるには、デモこそが適した場所です。デモでわかるのは、仕組みが動くかどうかです。利益を出せるかどうかまではわかりません。
実データから見えること
ShowMyTradesで取引履歴のある公開口座(2026年8月時点)を中央値で見ると、時間加重収益率は+3.2%、最大ドローダウンは9.7%、プロフィットファクターは1.28です。長期で見てプラスになっているのは、全体の63.0%の口座です。
これらの数字にはリアル口座も含まれており、現実の摩擦が大規模に積み重なるとどうなるかを示しています。同じ口座群を摩擦なしで動かしたら、どの数字ももっと良く見えるはずです。これらの数字を生んでいるコストは、デモサーバーではどれも満額は請求されないからです。
なかでも大きなコストは、計算上の数字ではなく、実際に請求されたものです。この口座群全体で支払われた額は、手数料$4,782,670、スワップ$862,547にのぼります。デモサーバーはどちらの数字も表示できますが、実際に徴収することはありません。
ShowMyTradesで確認できる場所
ここで強調したいのは、この区別が自己申告ではないという点です。
- 公開されている口座ページには、どれもヘッダーに認証の行があります。最初のバッジはリアル口座かデモ口座のどちらかで、所有者が入力する項目ではなく、ブローカーのサーバーが報告する取引モードから判定されます。サーバー名に「demo」が含まれていれば、ほかにどんな情報が報告されていてもデモと判定されます。バッジにカーソルを合わせると、このステータスを踏まえてページの数字をどう読むべきかが表示されます。
- その隣には運用実績と取引権限のバッジがあり、履歴と所有権が第三者によって裏づけられているかどうかを示します。裏づけがない場合は、それぞれに警告アイコンが表示されます。
- 情報の行には、プラットフォーム、ブローカー(ツールチップに取引サーバー名)、口座の通貨、レバレッジが並びます。その成績が生まれた取引環境です。
- ターミナルパネル(MT5ではターミナルと開いているチャート)には、Ping、パケット再送、ターミナルのビルド、メモリ、自動売買、DLLの使用が表示されます。約定の背後にある、リアルタイムの接続状況です。
よくある誤解
- 「デモで6か月やったから準備はできた」:わかったのは、手順が回るということだけです。約定も、本物のドローダウンに直面したときの自分の振る舞いも、まだ試されていません。
- 「デモの価格は偽物だ」:配信されている価格は、たいてい本物です。シミュレーションされているのは価格ではなく、約定のほうです。
- 「少額のリアル口座ならデモと同じ」:デモよりはるかにましですが、ごく小さな口座には特有のゆがみがあります。最小ロットの制約、セント口座の換算、わずかな残高を大きく上回る手数料などです。
- 「デモの記録も記録のうち」:それは、コードが動くことの記録です。公開された成績を見る人は、リターンより先に、まず口座タイプのバッジを確認するべきです。
本物の成績と、見栄えだけを整えた成績を見分けるポイントは、EAの偽成績を見抜く方法を参照してください。
関連用語
認証済みの運用実績 (Verified Track Record)
認証済みの運用実績とは、読み取り専用の連携でブローカーから直接、途切れなく取得した成績データのこと。公開する本人が編集できる部分はどこにもありません。
バックテスト (Backtesting)
バックテストは、過去の価格データで売買手法をシミュレーションすることです。何を証明でき、何を証明できないのか、そしてブローカーと同期した実運用の結果がほぼ必ず食い違う理由を解説します。
注文執行 (Order Execution)
注文執行とは、ブローカーが注文を約定した取引に変えるプロセスです。成行執行と即時執行の違い、リクオート、部分約定、執行の質の測り方を解説します。
スリッページ (Slippage)
スリッページとは、想定していた価格と実際の約定価格の差です。なぜいちばん困るときにいちばん大きくなるのか、レイテンシでどう測れるのかを解説します。