ターミナルのPingとは?取引サーバーまでのレイテンシ
ターミナルのPingとは、MetaTraderのターミナルとブローカーの取引サーバーとの往復時間です。パケットが行って戻ってくるまでにかかる時間を、ミリ秒単位で表します。この値を決めるのはネットワークの経路で、その上で動く戦略ではありません。この空白の時間のあいだ、注文で求めた価格は「そうなればいい」という願いにすぎません。MetaTraderはこの値をマイクロ秒で報告し、ShowMyTradesはミリ秒に換算して小数点以下1桁で表示します。たとえば12,245µsは12.2msと表示されます。
仕組み
ターミナルは、取引サーバーとの直近の往復時間を記録しています。注文にかかる時間は、すべてこの上に積み重なります。
Ping(ms) = ターミナル ↔ 取引サーバーの直近の往復時間
注文のレイテンシ ≈ Ping/2 (リクエストが届くまで)
+ ブローカーの約定処理と検証
+ Ping/2 (約定確認が戻るまで)
ブローカーの責任といえるのは真ん中の項だけです。1つ目と3つ目は地理と経路で決まります。そのため同じブローカーでも、同じデータセンター内のターミナルなら3ms、地球の反対側の自宅回線なら280msといった差が出ます。
目安は次のとおりです。
- 50ms未満:非常に良好。タイルのツールチップもこの言葉を使っています。ブローカーのデータセンターに近いVPSなら、だいたいこの範囲です。
- 50〜150ms:自宅やオフィスの回線から、同じ地域のサーバーにつなぐ場合の標準的な値です。
- 200ms超(ツールチップが警告を出す境目):注文執行が目に見えて遅くなり、実際のスリッページも広がります。
これがどれほど問題になるかは、ある区別で決まります。損切り(ストップロス)と利確(テイクプロフィット)の注文はターミナルではなく取引サーバー上にあるため、接続がどれだけ悪くても発動します。Pingが遅らせるのは、ターミナル側から始める操作だけです。エントリー、手動での決済、注文の変更、そしてサーバー側の注文ではなくEA(エキスパートアドバイザー)の内部に組み込まれたトレーリングのロジックがこれにあたります。
なぜ重要か
成行執行では、レイテンシはそのままコストになります。約定するのはリクエストが届いた時点の価格で、送信した瞬間に画面に出ていた価格ではないからです。往復200msは5分の1秒。そのあいだ相場は自由に動けますし、注文がいちばん大事な場面ほど大きく動きます。
その5分の1秒が高くつくかどうかは、狙う値幅しだいです。数時間保有して50pipsの値動きを狙うポジションなら、気づかないうちに吸収してしまいます。3〜5pipsを狙うシステムでは、同じ時間で優位性のかなりの部分を失いかねず、それが毎回の取引で起きます。バックテストはこの点について何も語りません。いつでも、即座に、求めた価格で約定するからです。
ブローカーを責める前に、まず確認すべきはPingです。Pingが300msで約定が悪いなら、それはブローカーの顔をしたネットワークの問題です。
実データから見えること
以下の数字は、トレーダー全体ではなく、ShowMyTradesで公開されている口座についてのものです。ターミナルの計測値があるのは、口座の持ち主が自分のターミナルでShowMyTradesのEAを動かしている場合だけです。連携中の口座は1万以上あり、その大半がMetaTraderを使っています。cTraderとTradeLockerの口座はブローカーのAPIで連携していて手元のターミナルがないため、報告するPingもありません。
この口座群は、レイテンシの影響を強く受けます。自動売買の割合の中央値は99%、口座の53.9%は自動売買の割合が90%超です。ほぼすべての注文をプログラムが送っていて、人が手を止めて価格を確かめることなく往復していきます。つながっている先は703のブローカーサーバーなので、レイテンシの環境も1つではありません。
保有時間の中央値は2.4時間です。つまり中央値にあたる口座は、ミリ秒で何かが決まる領域の外にいます。この数字をページに載せる意味があるのは、秒単位で取引する一部の口座のためです。
ShowMyTradesで確認できる場所
Pingは、ターミナルパネルに並ぶ6つのタイルの1番目です。パネルは、口座の持ち主自身のダッシュボードにある口座ページにあります。見出しはMT5ではターミナルと開いているチャートで、ターミナルが開いているチャートも報告します。MT4では単にターミナルです。MT4のEAはチャートの一覧を集めないためです。ほかのタイルはパケット再送、ターミナルのビルド、メモリ、自動売買、DLLの使用です。
見出しの横には、ステータスバッジ(「接続中」「取引サーバー未接続」「オフライン」)と、計測値がどれだけ前のものかが表示されます。フラグより優先されるのはデータの新しさです。11分間更新がなければ、ターミナルが最後に何を報告していたかにかかわらず、口座はオフラインと表示されます。
押さえておきたい制限が2つあります。まず、このパネルは口座の持ち主だけのものです。データを返すエンドポイントは他人の口座へのリクエストを拒否するため、開いているチャートのEAの名前を含め、ターミナルの計測値が公開ページやウィジェットに出ることはありません。次に、このパネルはMetaTrader専用です。cTraderとTradeLockerの口座にはターミナルがありません。また、ターミナルから一度も報告が届いていなければ、パネル自体が表示されません。
よくある誤解
- 「Pingが低ければ良いブローカー」:Pingが測っているのは経路で、取引相手ではありません。約定の悪いサーバーへのPingが2msなら、悪い価格へ速くたどり着くだけです。
- 「1回の値が真実」:表示されているのは、前回の同期の時点での最新値です。数字そのものより安定しているかどうかのほうが大事で、それを補ってくれるのがパケット再送です。
- 「VPSで執行が改善する」:VPSが改善するのはネットワークの経路です。約定のスピード、価格配信、スプレッドの方針は何も変わりません。
同じ往復時間を、このタイルからではなくネットワークの側から説明したのがサーバーレイテンシです。同じ戦略を2つのブローカーで動かしたときに、レイテンシとコストを切り分ける方法は同じ戦略、違うブローカーをご覧ください。
関連用語
仮想専用サーバー (VPS)
VPSは24時間動き続けるレンタルサーバーです。自分のPCがスリープしても、再起動しても、回線が切れても、取引ターミナルを動かしたまま接続を保ちます。
注文執行 (Order Execution)
注文執行とは、ブローカーが注文を約定した取引に変えるプロセスです。成行執行と即時執行の違い、リクオート、部分約定、執行の質の測り方を解説します。
パケット再送 (Retransmission)
パケット再送は、送り直しが必要になったネットワークパケットの割合です。Pingより接続の安定性をよく表す理由と、値が上がると注文執行に何が起きるかを解説します。
スリッページ (Slippage)
スリッページとは、想定していた価格と実際の約定価格の差です。なぜいちばん困るときにいちばん大きくなるのか、レイテンシでどう測れるのかを解説します。