相関リスクとは?分散投資が機能しない理由
相関リスクとは、互いに独立しているように見えるポジションや口座が実は同じ要因で動いていて、そろって損失を出すことで生まれるリスクです。一見分散されたポジション構成なのに、ドローダウンは分散されずに1つの塊としてやってくる。その理由がこれです。リスクはポジションごとに1回ずつ数えられていたのに、実際にはまとめて襲ってきます。
仕組み
2つの通貨ペアの間の相関係数は、通貨ペアの相関で扱っています。ポジション全体で見たときに重要なのは、独立した賭けがいくつ残っているかです。
独立した賭けの数 = n ÷ ( 1 + (n − 1) × ρ )
n = ポジションの数
ρ = ポジション間の平均相関
それぞれ口座の1%をリスクにさらすポジションが3つある場合:
| 平均相関 | 合計リスク | 独立した賭けの数 |
|---|---|---|
| ρ = 0 | 1.73% | 3.0 |
| ρ = 0.7 | 2.68% | 1.25 |
| ρ = 1 | 3.00% | 1.0 |
| ρ = −0.5(3つの場合の下限) | ≈ 0% | — |
トレーダー本人は、1%のリスクを3回取ったつもりでいます。ρ = 1なら、実際には3%のリスクを1回取ったのと同じです。プラットフォームは、その違いを何も教えてくれません。
相関のあるエクスポージャーは5つの経路から入り込み、たいていのポジション構成はそのうちいくつかを同時に抱えています。
- 共通の通貨:EUR/USD、GBP/USD、AUD/USDのロングは、1つのドル売りポジションが3通りの姿をしているだけです。
- 1つの戦略を複数の銘柄で:1つのEA(エキスパートアドバイザー)が12の通貨ペアで取引すれば、1つのシグナル条件から12のポジションが生まれます。
- 1つの戦略を複数の口座で:同じEAを4つの口座にコピーすれば、4倍のサイズの賭けが1つあるのと同じです。問題になるのは口座ごとの資金ではなく、リスクにさらされている資金の合計です。
- 共通の相場環境への依存:ポジション構成に入っているトレンドフォローのシステムは、何を取引していても、同じもみ合い相場でそろって苦しみます。
- 共通の取引先:同じブローカー、同じ価格フィード、同じ約定。フィードの停止やリクオートの嵐は、すべてのポジションを同時に直撃します。
しかもρは一定ではありません。落ち着いた相場では各要素の動きがばらけ、ポジション全体は本当に分散されているように見えます。ところが流動性が干上がる局面では、相関は1に向かって収束していきます。
なぜ重要か
相関リスクは、ポジションサイジングが前提にしている計算を崩します。「1取引あたり1%」というルールは最悪のケースについての約束ですが、それが守られるのは取引同士が独立している場合だけです。相関のある10のポジションをそれぞれ1%で持てば、ルールをきちんと守っていても、1日で10%を失うことになります。
証拠金維持率にも同じように効いてきます。相関のあるポジションはそろって含み損に入るため、使用中の証拠金は変わらないまま、有効証拠金だけがポジション全体で減っていきます。強制ロスカット(ストップアウト)の水準には、ポジションを1つずつ分析して予想したよりも速く近づきます。
運用実績の見え方も歪めます。4つの口座がそれぞれ控えめなドローダウンを示していても、その4つがすべて同じ3日間に記録されたものかもしれません。別々に読めば4つのデータでも、実際には1つです。
実データから見えること
ShowMyTradesでは(2026年8月時点)、699人のユーザーが複数の口座を運用しており、429人が複数のブローカーに口座を持っています。取引履歴のある公開口座では、自動売買の割合の中央値が99%、自動化率が90%を超える口座は53.9%です。ここで公開されている口座の数字であり、トレーダー全体を表すものではありません。
これで規模感がつかめます。全ユーザーの半数以上が複数の口座を持ち、およそ3分の1は口座を複数のブローカーに分けています。たいていは、1つの取引相手に頼りきらないためです。しかしそれで分散されるのは取引相手であって、戦略ではありません。両方で同じ自動売買システムが動いていれば、2つのブローカーが同じエクイティカーブを2回描くだけです。自動売買の割合がほぼ100%となれば、それがむしろ標準的なケースです。
結果もこれと一致しています。最大ドローダウンの中央値は9.7%ですが、17.6%の口座は50%を超えたことがあります。これほど深い下落が、1つのポジションの失敗で起きることはまれです。実は同じポジションだった複数のポジションが、まとめて崩れた結果です。
ShowMyTradesで確認できる場所
- 項目別統計モジュールと、そのマジックナンバー別タブ。記録を銘柄別ではなく戦略別に分けて表示します。良い時期と悪い時期がそっくり重なる2つのマジックナンバーは、ラベルが2つあるだけで、システムとしては1つです。
- カスタム分析では、銘柄とマジックナンバーで絞り込めます。マジックナンバーを1つ除外して数字を計算し直せば、記録がその戦略にどれだけ依存していたかがわかります。保存したプリセットの一覧は公開ページでは表示されませんが、フィルターは使えます。
- チャート表示の収益率ビューを、2つの口座ページで見比べる方法。同じ日付に同じ山と谷を描く2本のカーブは、名前が何であれ1つの戦略です。
- 複数の口座を1つの集計ビューにまとめるポートフォリオ。エクイティカーブ、統計、指標がすべて合算されます。相関リスクが問題になるのは口座ごとの数字ではなく、この合計です。
- マジックナンバー列とコメント列のある取引テーブル。どのシステムが、いつ、何を建てたかがわかります。
よくある誤解
- 「8つの通貨ペアを取引しているから分散できている」:そのうち7つが対ドルの通貨ペアなら、持っているのは8倍のサイズのドルポジション1つです。
- 「ブローカーを分ければリスクも分散される」:分散されるのは取引相手と約定で、それ自体には意味があります。ただ、両方でまったく同じように動いている戦略は分散されません。
- 「相関は安定しているので、それを前提に計画を立てられる」:相関は平常時の相場で測られたもので、大きなドローダウンが生まれる局面では1に向かって収束します。
- 「ある通貨ペアをロングし、相関のあるペアをショートすればリスクは相殺される」:方向性の賭けが、クロスの賭けに置き換わるだけです。しかも保有するために、スプレッドとスワップを2回ずつ払うことになります。
4つのページを別々に見るのではなく、合算したエクスポージャーを見る方法は、ポートフォリオで複数の口座を管理する方法を参照してください。
関連用語
ドローダウン (Drawdown)
ドローダウンは、口座の価値がピークからボトムまでどれだけ下がったかを示す割合です。計算式、損失が積み重なっていく理由、数千の実際の取引口座のデータを紹介します。
通貨ペアの相関 (Forex Pair Correlation)
共通の通貨を持つ通貨ペアは連動して動きます。相関はその結びつきの強さを測るもので、別々に見える3つの取引を1つのポジションに変えてしまう正体でもあります。
証拠金維持率 (Margin Level)
証拠金維持率は、有効証拠金を必要証拠金で割ってパーセントで表した値です。計算式、マージンコールと強制ロスカットのしきい値、そして負けているときほど速く下がる理由を解説します。
ポジションサイジング (Position Sizing)
ポジションサイジングは、ストップまでの距離とpips価値を使って、リスクの割合をロット数に変換する考え方です。計算式、代表的な3つの方法、サイズを誤ったときの代償を解説します。