残高ベースのドローダウン(DD on Balance)とは
残高ベースのドローダウンは、口座の決済済み残高がこれまでに記録した、ピークからボトムまでの最大の下落幅です。保有ポジションの含み損益は無視します。損失は確定して初めて数えるため、運用実績に並ぶ2つのドローダウンのうち、甘く出るほうの数字です。ShowMyTradesでは残高ベースのDDとして表示され、常に有効証拠金ベースのドローダウンと並んでいます。
仕組み
どちらも、残高から求めた同じハイウォーターマーク(過去最高値)を基準にした、過去最悪の値です。違うのは、それと比べる値と、比べる頻度です。
ピーク = 決済済み残高のハイウォーターマーク。入出金のたびに同じ比率で調整
残高ベースのDD % = (残高 − ピーク) / ピーク × 100 の最悪値 取引ごと
ドローダウン % = (min(残高, 有効証拠金) − ピーク) / ピーク × 100 の最悪値 1日1回
ただし 有効証拠金 = 残高 + 保有ポジションの含み損益
残高は口座自身の履歴から順に積み上げて計算し、決済済みの取引はすべて手数料とスワップを差し引いた金額で反映します。ピークは取引の利益で切り上がり、ひとりでに下がることはありません。どちらも現時点の状態ではなく過去最悪の記録なので、改善することはありません。
入出金は意図して別扱いにしています。入金や出金で残高が変わると、ピークも同じ倍率で調整します。そのため、資金の出し入れでドローダウンが生まれることも、埋まることもありません。どちらも下限は−100%で、強制ロスカット(ストップアウト)で残高がマイナスになった場合は全損として表示されます。
2つは同じピークを共有しているので、セットで1つの測定値として読めます。
- 2つが近い。ポジションは、逆行し始めた位置の近くで決済されています。含み損を持ち越している量はわずかです。
- 有効証拠金のドローダウンがはるかに大きい。負けポジションを持ち続けています。口座が損失を計上するのが遅く、残高の数字はリスクではなく、帳簿の付け方を表しているにすぎません。
- 2つが同じ。含み損と最高値のタイミングが一度も重ならなかったか、その期間の含み損益の履歴が存在しないかのどちらかです。
- 残高のドローダウンのほうが大きい。たいていはサンプリングの差です。残高は取引ごとに確認しますが、有効証拠金は日次の終値でしか見ません。1日のうちに開いて埋まった落ち込みは、前者にだけ現れ、後者には残りません。
なぜ重要か
2つの差は、負けポジションを決して決済しないシステムを見抜く、いちばんわかりやすい手がかりです。グリッド、マーチンゲール、ナンピンの戦略は、仕組み上なめらかな残高カーブになります。決済しないポジションは、残高に一切触れないからです。有効証拠金の推移はまったく違う姿を見せ、口座を終わらせるのはその有効証拠金のほうです。
2本の線の差は、残高の数字にまだ知らされていない損失です。
これは解釈の問題ではありません。証拠金は有効証拠金で計算されるため、証拠金維持率もマージンコールも有効証拠金の線に従い、残高の線はまったく見ていません。しっかり利益が出ていて、残高ベースのドローダウンが3%、有効証拠金のドローダウンが45%という実績は、低リスクのシステムではありません。45%もドローダウン中だったのに、それを認めていなかっただけです。逆に2つの値がそろっていれば、それ自体が証拠になります。損失を、発生したときに受け入れていたということです。
実データから見えること
以下の数字はShowMyTradesで公開されている口座のもので、トレーダー全体ではありません。取引履歴のある公開口座(2026年8月時点)では、最大ドローダウンの中央値は9.7%です。分布の両端は広く、38.5%の口座はピークから5%を超えて下がったことが一度もありません。その一方で、38.2%の口座は20%を超えるドローダウンを経験し、17.6%の口座は50%を超えています。
2つの数字が真価を発揮するのは、最初のグループです。5%未満という記録は、厳しいリスク管理の結果か、まだ確定していない含み損かのどちらかで、残高のチャートでは両者の見分けがつきません。この母集団の大半は自動売買です。中央値の口座は取引の99%を自動売買システムで行っており、53.9%の口座は90%超が自動です。負けポジションを抱えたロボットは、疲れることも怖気づくこともありません。
ShowMyTradesで確認できる場所
残高ベースのDDは、口座統計パネルでドローダウンのすぐ下にあります。すべての公開口座ページとフルダッシュボードのウィジェットに表示されます。この2行がパネルのリスク項目のすべてで、見出しはなく、区切り線で分けられています。値は誰かが入力したものではなく、同期された口座の履歴をもとに当社の統計サービスが計算したもので、マイナス記号を付けずに表示されます。
ページ上のほかの2か所で、全体像がそろいます。有効証拠金の行は、有効証拠金を残高に対する割合で示します。100%を下回っていれば、保有ポジションがいま含み損を抱えているということで、その不足分こそ残高ベースのDDが除外しているものです。チャート表示のドローダウンビューは、口座の全期間の日次ドローダウンを棒グラフで描くため、下落の期間を推測ではなく目で確認できます。
よくある誤解
- 「小さいほうの数字が本当のリスク」:小さいほうは、たいてい残高ベースのDDです。そして仕組み上、楽観的に出るほうの数字です。
- 「取引コストは含まれていない」:含まれています。決済済みの取引は、手数料とスワップを差し引いた状態で残高に反映されます。
- 「出金するとドローダウンとして表示される」:表示されません。資金が動くと、ハイウォーターマークも残高と同じ倍率で調整されます。入金でドローダウンを埋めることもできません。
- 「2つの数字は同じ細かさで見ている」:有効証拠金の数字は1日1回しか測らないため、1つのセッションのうちに下落して完全に戻った場合、その跡は残りません。
深さと期間がなぜ別の問題なのかも含め、手法の全体は最大ドローダウン徹底解説を参照してください。
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